人手不足を補うこれからの農業

TPP、地産地消、6次産業化。近年急激に関心が高まる農業界。人が生きていくために必要な衣食住の中で、「食」は必要不可欠なもの。長寿大国の「食」を支えてきたのは、農業法人や個人農家などの生産者です。しかし、日本の農業界は「人材」という観点で大きな転換期を迎えています。例えば農業従事者の高齢化が挙げられます。現在の農業従事者の平均年令は60歳を超えており、労働力不足や担い手不足による耕作放棄地の増加、農業人口の減少が大きな課題になっています。一方で、これらの人不足を補う為に各地域、各団体、各農家毎に、様々な取り組みが行われています。また、若い新規就農希望者が増加していることや、企業の農業参入による地方の雇用増加など、農業界にとって今後の可能性も見えてきています。いずれにしても「農業で生計を立てたい」「農業で独立したい」といった方々による農業転身が今後の農業界を明るくすることは、想像に難くありません。

後継者不足から見る今の農業の問題点

後継者不足から見る今の農業の問題点

深刻な後継者不足 農業と言うと、貴方はどの様なイメージを浮かべるでしょうか、きっと多くの人は、貧しさや重労働による辛さ、汗と泥にまみれると言ったネガティブな印象を抱くと思います。 農業には、食糧の生産を行い、社会と経済の安定を担う重要な役割が有るにも関わらず、残念な事に、現在の日本の農業には、その様なイメージがまだまだ根強いのです。 現在の日本の農業には様々な問題点が有りますが、特に深刻なのが農業従事者の高齢化と後継者の不足です。 後継者がある程度の割合で就農していれば、高齢化の問題もそこまで深刻な問題には至りませんが、若い人材の不足はもはや慢性化しており、農業における抜本的な構造改革が迫られているのです。 先ほども述べましたように、農業には社会経済における重要な役割が有るにも関わらず、そこで就農しておられる方々は、ネガティブなイメージの為か、必ずしも世間から高い評価を戴いてはいないのです。 そのイメージの為になかなか結婚が出来ず、就農を諦めざるを得ない農家も多く出ているのです。 農業を取り巻く環境は年々激しさを増しており、これからは若い人材を如何にして確保するかが大きな課題です。 農

続きを読む
人手不足を補うこれからの新しい農業と、その問題点について

人手不足を補うこれからの新しい農業と、その問題点について

近代的な農業への転換を進める 農業従事者の高齢化と後継者の不足、さらには外国産の安い農産物の輸入増により、現在の日本の農業は大きな危機を迎えています。 特に安い農産物の輸入増は大きな脅威で、その煽りを受けた為に国内の農家が離農を余儀なくされてしまったケースも多く見受けられます。 この問題に対しては、様々な意見が存在しますが、決定的な問題点は農業の近代化が大きく遅れた点に有ります。 農業の近代化、それは例えば、収穫物の質と量が天候に左右されてきたこれまでの農業から、野菜工場や大規模な温室ハウス栽培へと移行し、常に高品質で安定した農産物の生産に有ります。 また、ハウス内の温度や土壌の水分量など、生育に関わる様々な情報をコンピュータ制御をする事で、多くの人手と労力と経験を必要としていたハウスでの作業が大幅に省力化されるのです。 現在では、キノコ類・レタス・トマト・イチゴ・ホウレンソウ・カイワレ大根・スプラウトなど、多くの野菜が近代化されたハウスで栽培されています。 近代的なハウスで野菜を栽培する事の最大の問題点 しかし、その反面これには多くの課題が残されています。 例えば、これらの近代化され

続きを読む
原油価格高騰の対策と技術開発

原油価格高騰の対策と技術開発

高騰を続ける原油価格に対する対策方法 高止まりをしている原油価格が下落をする可能性は当面低いと見られます。 しかし、農業を営んでいく限りは、ガソリンや軽油と言った化石燃料に依存をする体質は無くならないのです。 その為、農業の現場で出来る方法として、化石燃料に頼った農業のあり方を抜本的に見直すか、出来る限りの所で原油の使用料を減らす様にする必要が有ります。 その、主な取り組みとしては、冬場のビニールハウスの加温を従来の燃料であった重油から山林から伐採した間伐材や廃材を薪として利用したり、ペレット状に加工して燃料にすると言った取り組みが始まっています。 その他にも、トラクターの燃料となる軽油の代わりに使用済みの天ぷら油を加工処理して利用する方法が有ります。 また、マルチと呼ばれる野菜の下に敷くポリフィルムを、石油から加工して作った従来の製品から、紙や綿などの植物性の製品にする方法も始まっています。 その問題点とは 一見すると新しい技術で化石燃料のコストをカバー出来る様な感じに映りますが、これらの技術にも大きな問題点が存在するのです。 例えば、間伐材を加工したペレットや薪を燃やした際にはスス

続きを読む
農業プラスアルファの経営のあり方

農業プラスアルファの経営のあり方

農家のイメージと多角化経営の歴史 農家のイメージとは、農業のみ行っていると言う考え方が広く行き渡っています。 確かに農家とは、米・野菜・果物・畜産物を育て、そこから生計を立てています。 ですが、それは自然が相手の仕事になる為、天候や病害虫の発生等のリスクが付きまといます。 そこで農家は、農業以外、あるいは農業を行っていく上で発生した副産物を所得の一つにしたのです。 その事業内容は様々ですが、冬場の炭焼き、狩猟、蚕の生育から絹織物の生産、和紙の原料となるコウゾ・ミツマタの生産から和紙の製造などが有ります。 その他にも、島根県の東部である出雲地方では、日本刀、包丁、鍬、鎌などの原材料となる玉鋼の生産にも携わっていたのです。 出雲地方の農家の方々は、稲の収穫が終わった秋から冬場にかけて山に入り、山の木を切り、炭を焼き、山を切り崩しては土砂を流して砂鉄を採取していったのです。 湿気の少ない冬場の気候は、「たたら製鉄」と呼ばれる製鉄が出来る時期で、多くの農家の方々にとっても貴重な雇用の場にもなっていたのです。 この様に、日本各地には、その地域の気候風土に合わせた独特の伝統産業が農家の人達の雇用の

続きを読む
農業をもっと楽しもう

農業をもっと楽しもう

農業は楽しみながら稼ぐ 私達にとって仕事をする、お金を稼ぐと言う事は、とても大変な事です。 しかし、その中にあっても仕事をする事の楽しみ、喜びがあるだけでもモチベーションが大きく変わって来るのです。 それは農業にも当てはまります。 農業の楽しみ、それはお金を稼ぐ事以外にも、自分の手で生命を育て上げ、そしてその成果がはっきりと分かる事にあります。 自分で育て上げた収穫物を自分や大切な人と一緒になって味わう、その様な事の出来る喜びは、農業以外では体験する事の出来ない農業ならではの醍醐味なのです。 農業でストレス発散 農業と言うと、都会で働くビジネスマンにとって無縁な存在に映るでしょうが、競争や、ストレスに苛まれている現状を見ると、決して無縁ではない事を証明しています。 それは、人間が土や木や水と言った自然物から離れれば離れるほど人間本来が持っているサイクルが崩れ、それがストレスを産む一因にもなっているのです。 その証拠に、都道府県県別の幸福度ランキングや出生率を見ても、一見裕福であるはずの都市部においては、常に下位にあり、逆に地方部では自然の豊かな地域ほど高ランクに入っています。 もちろん

続きを読む
農業と食育について

農業と食育について

食や農業に対する無関心 子供と料理をする時に、野菜の知識や雑学を子供に教える事が出来ない親が少なくないと言う話が有ります。 野菜だけでなく、毎日戴くお米がどの様にして生産され、食卓に上るのかをしっかりと説明出来る親も少なくないと言われています。 子供の将来を考えても、学校から教わる教科のみ習得しても、お米や野菜の作り方が分からない、ましてや田んぼ・畑にはいったことすら無いと言う子供たちが都市部を中心に増えています。 田畑を見た事の無い都市部の子供達 食に対する無理解・無関心は日本の農業を衰退に導く上に、農業技術の継承が絶えてしまうと言う危機を孕んでいるのです。 その危機感を解消する為に、特に地方部の学校では野菜栽培の授業や田植え・稲刈りと言った課外授業に熱心に取り組んでいます。 しかし、多くの子供達を抱える都市部の子供達は、周囲に田んぼはおろか畑も殆ど無いような環境下で生活をしている場合も多く、大切な食料に対する教育環境が整っていないと言うのが現状なのです。 ですが、この問題は今に始まった訳ではなく、戦後の高度経済成長の為に多くの田畑をつぶし、道路や工場や住宅などを造成した結果、農業に

続きを読む
農業と農薬の問題について

農業と農薬の問題について

農薬を使うべき理由とは スーパーの陳列棚に並ぶ色とりどりの野菜や果物、しかし多くの消費者は、その生産過程で使用をされてきた農薬については、あまりよく知らないのが実情なのです。 農薬と聞くと、危険な薬と言う風に一般では認識をされており、事実、農薬はどれをとっても多かれ少なかれ人体に有害であり、農作業で使用する側も完全防備で使用しなければならないのです。 では、何故にその様に危険な農薬を使用しなければならないのかと言うと、そこには「需要と供給」の関係性が関わっているのです。 需要、すなわちそれは綺麗な野菜を食べたいと言う消費者側のニーズに応えると言う側面からきています。 例えば、青虫の付いた野菜よりも、青虫の付いていない野菜を選ぶ人が殆どであり、それに農薬が使用されていても需要があると言う事なのです。 誰でも見た目が綺麗な野菜を食べたいでしょうが、畑で生産をする以上は虫達にとって御馳走が目の前にある様なものなのです。 しかし、供給をする立場の農家の方は、そう言う訳にもいかず、綺麗な状態で出荷しなければならないので、農薬を使用する必要がある時は使用をするのです。 生産維持の為の農薬 農薬と一

続きを読む
TPPから考える日本の農業の問題点①

TPPから考える日本の農業の問題点①

TPPの長所と短所 TPP(環太平洋パートナーシップ)の議論が連日多くの報道機関やインターネットを介して報道されています。 TPPを簡単に説明しますと、協定を結んだ国家間において関税や様々な規制を取り払い、物・金・サービスなどが、あらゆる形で国境を越え、私達の生活に入り込むようにする為の取り決めなのです。 TPPの長所は、関税や規制などを大きく取り払うので、商品を締結国に輸出したい場合には、従来より大きく緩和された条件の中で輸出が出来る為に、輸出する立場は、非常に楽になると言う事です。 また、輸入を受け入れる側も、これまでとは違った外国産の商品やサービスなどを受け入れる事が出来る為に、選択肢が増えると言った恩恵があります。 しかし、その反面TPPの短所としては、安価で大量の輸入品が入り込む為に、その輸入国の産業を奪ってしまう恐れがあるのです。 特に、その産業が零細である場合は、廃業に追い込み、失業者を大量に増やしてしまう可能性があるのです。 TPPが農業に与える影響 TPPの問題は、農業にも大きな影響を与えます。 特に我が国の農業は、零細農家が多く、米・野菜・果物の多くは個々の農家が生

続きを読む
TPPから考える日本の農業の問題点②

TPPから考える日本の農業の問題点②

TPPをチャンスに変えられるか TPPをチャンスと見るか、ピンチと見るかは人それぞれの立場で異なりますが、競争力の弱い日本の農業は明らかにピンチになります。 なぜならば、どの様な産業においても、生命線となるのは技術力と資金力であります。 零細で技術力の低い日本の農業は、海外の高度な技術と資金力の前には無力に等しいのです。 しかし、昨今話題になっている農業の株式会社化や株式会社の参入など、様々な規制緩和を進める事で、より多くの人材とチャンスを農業の世界にもたらす可能性があります。 その為には、旧態依然とした農業から脱却し、近代的で魅力的な農業へと舵を切る力を持つ人材の確保をどの様に進めるかが大きな課題になってくるのです。 農業とは何の為にあるか TPP交渉が加速する中で、日本は様々な課題に直面しています。 特に農村部では、人口減少が著しく毎年多くの集落が消えており、それと同時に就農者の減少が目立っています。 採算のなかなか取れない農業に魅力が無くなってしまったのは事実であり、これを克服するのは容易な事ではないのです。 しかし、普段は当たり前の様にスーパーで買う事の出来る米・野菜・果物など

続きを読む
TPPから考える日本の農業の問題点③

TPPから考える日本の農業の問題点③

海外の農業資本との提携と技術導入 TPPの特徴は、関税の撤廃のみならず資本・サービスの自由化と言うのが挙げられ、その事が、農業の分野にどう言った影響が表れるかは議論の最中です。 しかし先日、政府は農業協同組合(以下JA)に対して、非常に大きな組織改革を迫ったのです。 これまで農業分野を事実上独占して来たJAに対して、この様な事を迫ると言う事は、ほぼ間違いなくTPPを睨んだ組織改革になります。 なぜならば、TPPの大きな目的である、資本・サービスの自由化の為には、ここでJAを大きく変えておく必要があるからなのです。 日本の農業には、これまで殆どと言ってよいくらいに海外からの資本や技術は入って来なかったのです。 この事は、よく言えば国家による農業の保護政策であり、悪く言えば鎖国政策であったのです。 しかし、これからはTPPと言う黒船が、非常に強い態度で日本の農業に開国を迫って来ます。 TPPがスタートすると、日本の農業にも海外からの資本と技術が入り、おそらく今までの農業とは異なる風景が広がる様になります。 例えば、海外の企業が直接的に、あるいは間接的に農地を集約し、ロボットや超大型機械を使

続きを読む