近代的な農業への転換を進める
農業従事者の高齢化と後継者の不足、さらには外国産の安い農産物の輸入増により、現在の日本の農業は大きな危機を迎えています。 特に安い農産物の輸入増は大きな脅威で、その煽りを受けた為に国内の農家が離農を余儀なくされてしまったケースも多く見受けられます。 この問題に対しては、様々な意見が存在しますが、決定的な問題点は農業の近代化が大きく遅れた点に有ります。 農業の近代化、それは例えば、収穫物の質と量が天候に左右されてきたこれまでの農業から、野菜工場や大規模な温室ハウス栽培へと移行し、常に高品質で安定した農産物の生産に有ります。 また、ハウス内の温度や土壌の水分量など、生育に関わる様々な情報をコンピュータ制御をする事で、多くの人手と労力と経験を必要としていたハウスでの作業が大幅に省力化されるのです。 現在では、キノコ類・レタス・トマト・イチゴ・ホウレンソウ・カイワレ大根・スプラウトなど、多くの野菜が近代化されたハウスで栽培されています。
近代的なハウスで野菜を栽培する事の最大の問題点
しかし、その反面これには多くの課題が残されています。 例えば、これらの近代化されたハウスで野菜の栽培を行う為には、多くの資金と大量の水が供給出来る土地が必要になります。 どちらの問題も重要ですが、特に水の供給は大変重要な事で、野菜栽培にとって死活問題になります。 現在、それを克服する為の取り組みとして以下の点が実践されています。
- 雨水を蓄え、それを濾過しながら必要最小限の量で植物に灌水する
- 点滴を打つ要領で、植物の根元に1滴1滴灌水する
- 海水を淡水化して利用する
これらの方法を効率よく組み合わせ、常に水不足に陥らない様にする努力がなされているのです。
これからの課題
農業と言うと、田んぼや畑で泥まみれになりながらの作業と言うイメージが強いですが、そればかりが農業では無いと言う事を多くの人に知ってもらう事が大切です。 また、農業経験の有無に関わらず、出来るだけ多くの人材を取り込み、様々な知識と経験を融合させる事が重要になります。 原油価格の高騰が農業に及ぼす影響について
原油高騰が農業に与える影響について
原油価格の高騰が日本の経済に大きなダメージを与えています。 ニューヨーク原油先物価格は、6月に入ってから1バレル当たり約106米ドルを付けており、これまでの所、価格が下がる兆しは一向にないのです。 むしろ逆に、産油国やその地域で大規模な紛争のニュースが流れる度に原油先物価格は上昇をしているのです。 このあおりを受けて、日本でもガソリン・軽油・灯油・重油など殆どの化石燃料の価格が日を追う度に上昇をしているのです。 その事が、農家にとって、トラクターの燃料や、ハウスの暖房に使う燃料等のコスト負担増となっているのです。 原油価格が上昇しても、多くの工業製品や日用品は価格転嫁を行う事が出来る優位な立場にある為、原油価格の上昇と連動するようにして販売価格の値上げを行っており、既に多くの所で物価が上昇しています。 ですが、農産物に関しては、多くの農産物の価格決定が青果市場で決まるので、その結果、買い手側の立場で価格が決まりやすい為、売り手側の希望価格が反映されず、なかなか価格の転嫁が出来ずにいるのです。 農業と化石燃料の関係性とは、なかなかイメージが湧きませんが、代表的な例を挙げると、ビニールハウスのビニールや、野菜苗の下に敷くポリマルチ、そして農業機械の燃料やハウスの暖房などが挙げられます。 その為に、原油価格の上昇に伴うこれらのコスト負担増は、農業経営にとって赤字を招く最大の要因になるのです。
他人事では済まされない供給問題
私達人間にとって、毎日欠かす事の出来ない食糧を生産する為には、多くの労力と化石燃料が必要になるのです。 これまでは安価で購入出来た化石燃料も、このまま高騰を続ければ農業生産に対して確実なダメージとなり、じりじりと国内生産は減少の一途をたどります。 そして、決して遠くない将来には、需給バランスの崩壊により農産物の価格高騰を招く事態が予想され、それが日本の社会や経済に大きな影を落としかねない事態にもなるのです。