これから農業を始めようと思っている方、また農業への転職を望む方の中には、花卉栽培で生計を立てようと考えている方もいることでしょう。そんな方のために、ここでは花卉栽培に必要な準備や得られる利益について詳しく触れていきます。
花卉栽培を始めるための準備とは?
花卉栽培を始めるためにまず準備しなければいけないのは資金です。耕具や機械、土地や栽培設備を用意するのに数百万円の資金が必要となるでしょう。それから素人がなにも知らずに花卉栽培を始めるのは困難ですので、農業や花卉栽培に関する基礎的な知識や技術も身につけなければいけません。ただ農林水産省は新たに農業を始める新規就農者のサポートに力を入れており、さまざまな支援制度が設けられています。新規就農者への経営支援や給付金、さらに無利子の資金貸付、農業機械や施設等の購入費の補助、農地確保のための相談などの制度を利用することで、農業への転職や新規就農をスムーズに行うことができるでしょう。また自分がどんな種類の花卉を栽培し、どういった経営をしていくつもりなのかによって、それに見合った栽培施設のシステムや設備を準備しなければいけません。花卉の栽培方法には主に土壌による土耕栽培システムと、培養液による水耕栽培システムの2つがあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。土耕栽培は、設備投資が比較的低額、野菜などの味が濃厚になりやすい、害虫や天候による影響を受けやすい、除草や土作りに労力がかかる、といった特徴を持っています。一方で水耕栽培には、管理が楽で栽培がしやすい、収穫物の量や品質が安定しやすい、設備投資に資金がかかる、電気を使わなければならない、などの特徴があります。
花卉栽培とその他農業との利益データを比較してみよう!
農業が好きだったり田舎でののんびりした生活に憧れていたり、就農を決意する動機は人それぞれでしょうが、生活を維持できるだけの利益を得られなければ話は始まりません。そこで花卉栽培にどの程度の利益が見込めるのか、収益から経費を引いた年間の農業所得を元に、他の農業と比較してみましょう。農林水産省が公表している平成26年度版の営農類型別経営統計によれば、個別経営における施設花卉作経営の平均農業所得は約340万円となっています。それに対し他の個別経営農業の平均農業所得は、水田作経営が約27万円、畑作経営が約246万円、施設野菜作経営が約424万円、果樹作経営が約188万円、酪農経営が約833万円、肉用牛経営が約354万円、養豚経営が約1416万円、採卵養鶏経営が約502万円、ブロイラー養鶏経営が約826万円という結果でした。さらに組織法人経営における施設花卉作経営の平均農業所得は約644万円となります。他の組織法人経営農業の平均農業所得は、水田作経営が約1362万円、畑作経営が約1304万円、施設野菜作経営が約882万円、果樹作経営が約454万円、酪農経営が約2671万円、肉用牛経営が約564万円、養豚経営が約1875万円、採卵養鶏経営が約2802万円、ブロイラー養鶏経営が約1191万円という結果になりました。このように、経営の規模が大きくなるほど利益が伸びる傾向にあることがわかります。
小規模経営の場合、花卉栽培は儲かる!
農業所得データだけを参照すると、花卉栽培の利益はあまり高くないように見えます。しかし注目しなければいけないのは、高い利益を上げているのがどれも畜産系の農業であることです。家畜の飼育は植物の栽培と管理方法が大きく違いますから、要する労力も異なります。そのためここでは畜産系と栽培系の農業は別物と考えたほうがいいでしょう。改めて栽培系の農業だけに絞ってデータを見ると、花卉栽培は個別経営において平均農業所得が2番目、組織法人経営においては4番目となっています。この結果からわかるのは、規模が小さい経営の場合、花卉栽培は高い利益を上げられるということです。つまり個人や家族で新規就農して小規模に始めるなら、花卉栽培は儲かる農業だと言えるでしょう。もちろん就農直後は栽培の熟練度の低さや初期投資費用によって思うような利益を上げられない場合もあるでしょうが、経験を積むうちに花卉栽培のノウハウが身についていくでしょうから、利益の向上も期待できます。