古くから贈り物として利用されるなど、花々は日本の生活と密に関わりあってきました。さまざまな観賞用植物を栽培する花卉栽培の現状や特徴について、「あまり良く知らない」という方が多いことも事実です。今回は、日本の花卉栽培の現状と特徴についてまとめてみました。
人々に美しい花々を届ける!花卉栽培産業
花卉栽培とは、鑑賞用の植物を栽培する農業のことを指します。サボテンや盆栽、花木などが花卉栽培によって生産されています。花卉栽培に使用される農地活用面積は、全体の1%未満といわれ、栽培するために広大な土地を必要としないことが特徴の1つです。多くの土地を必要としないため、他の農作物と競合をする必要性が低く、市場が安定しやすいといわれています。従業者数は、農家全体の7%程度、売り上げは6%程度であるといわれており、1品当たりの売買単価が高いといえます。このため所得の安定効果が高く、栽培に必要な土地面積が狭い花卉経営は、他の作物栽培を複合経営する農家が多いことも特徴です。花卉栽培は、施設栽培などを活用することによって、労働需要のピークを避けることが可能になります。他の農作物育成とバランスが取りやすくなり、農業経営の安定を促進すると考えられています。後継者育成や耕地拡大などの農政問題を解決にも繋がるといわれる花卉栽培ですが、その一方で生産開始にかかる初期投資の問題や、栽培技術の獲得などが難点として挙げられています。
日本の花卉栽培産業の現状とは
日本では、花卉離れが進んでいるといわれています。花卉栽培の生産量は、アメリカ、オランダに次ぐ世界3位に入る日本ですが、その消費量は欧米諸国を大きく下回ります。フラワーギフトといえば、病院へ見舞いに行く際などに贈られることも多い品でしたが、花卉に付着した菌や、薬品の影響によって感染症を引き起こすことも考えられることから、現在では花卉の持ち込みを禁止する病院も増えています。花卉の需要が低下し、病院内や病院周辺に点在していた生花店が減少するなどの影響を受けています。また、政府が問題視する農業問題は、主に「農地活用」と「食料自給力向上」の2点です。花卉栽培に必要な農地面積は、他の栽培産業よりも少なく、食用ではないため食料自給力の向上には繋がりません。政府が推進したい農産業には当てはまらず、花卉栽培農家を支援する政策などの展開を期待することはできないといえます。
日本の花卉栽培の特徴とは
花卉は食用ではないため、必需財であるとはいえません。しかし、日本の冠婚葬祭には花卉は欠かすことのできないものとなっています。継続して消費するものではなく、催し事に合わせた花卉がそれぞれのシーンに必要になるため、価格ではなく品質にこだわる消費者が多い傾向にあります。このため、花卉栽培に求められる栽培方法で、高品質な花卉を生産することが重要なポイントになります。日本の花卉栽培によって生産された商品は、海外での需要も高いです。日本への花卉輸入と輸出の関係に着目すると、輸入に関しては東アジアや東南アジアからの輸入量が増加、輸出に関しては中国への輸出が増加している傾向にあります。国内で花卉を栽培して販売する場合、価格を下げることに重きを置いてしまうと、外国から輸入された商品との低価格商戦に巻き込まれてしまう可能性もあります。花卉栽培によって収入を安定させることを考える場合は、日本の栽培技術を使った高品質な花卉を生産し、世界にアピールすることが重要であると考えられています。そのことを踏まえ、花卉業界では、長期保存技術の開発や現地で開かれる展覧会などを推進する取り組みが広がっています。