農業法人設立を検討するときに

農業や酪農業に興味があり新規で就農を考えている人にとって、農業法人という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。農家や酪農家は個人で事業を行うこともできますが、農業法人を設立することでどのようなメリットがあるのか気になるところです。どのような要件が揃えば設立が可能なのか、また個人事業との違いやメリットについて考えてみませんか?新規就農を検討している場合には、農業法人について知識として知っておくことは大切といえるでしょう。

脱サラでの農業経営の写真 農業法人の設立に至るまでの背景

農業の今までのイメージとしては、家族や夫婦、または個人などで小規模に事業を行っている姿を思い浮かべるのではないでしょうか。そのような慣習の背景になっているのは、農地を売買したり賃借などをしたりする際の取引の難しさが挙げられます。そのため、農業関連の仕事を新たに始めたいと考えていた人が存在していたとしても、農地を容易に取引することが難しいことが理由で新規で参入するには少々敷居が高いと感じることがありました。しかし、農家は世襲で農地を相続して代々続けていくものという概念を変えることになったのは、農業法人の存在です。農業法人を設立することで、法人として農業という事業を行うことができるようになりました。農業法人設立のためにはいくつかの要件を満たす必要がありますが、農業に興味がある人で相続農地がない人にとっては、農業を始めるにあたり検討するのも良い方法といえるでしょう。では、どのように農業法人を設立すれば良いのかをみていきましょう。

脱サラでの農業経営の写真 農業法人にもいろいろな形がある

農業法人にはいくつかの形があります。経営上の分類でいうと、大きくわけて農事組合法人と会社法人と呼ばれる法人があります。まず、農事組合法人を設立するための要件のひとつとして、3人以上の発起人が必要です。設立の流れとしては、発起人会総会を開催し、農事組合法人設立の目的となる定款の設定や作成を行います。その後、役員理事を選任する必要があります。発起人会総会後に、事務的な手続きを理事会へ引き継ぎを行います。農事組合法人の組合員が構成されたら、各組合員が設立される農事組合法人に対して出資を行います。組合員からの最初の出資が完了した後の2週間以内に、該当の農事組合法人の法人登記を行います。次に、会社法人として農業法人を設立する場合は、農地法においての設立要件を満たす1人以上の人数が存在することで申請が可能になります。会社法人として登記申請するためには、取締役などの役員が1人以上存在することが設立要件となります。

農業法人設立で得られるメリット

農業法人を設立することで、相続などで農地を引き継がなくても新規で農業を始めることができるため、新規就農者にとってはそれだけでメリットがあります。さらに、農業法人となることにより個人事業ではなくなるため、家計との切り離しが可能になります。会社経営になると、経営者の選出も自由に行うことができることもメリットといえるでしょう。事業規模が拡大するにつれ従業員を雇用することができます。今までは労働時間が比較的長時間で曖昧になりがちな農業労働時間も、給与という形で明確にできることもメリットといえます。また、法人化することで税制上のメリットが得られます。役員報酬を給与として計上することができたり、賞与や退職金などを損金計上することができたりするので節税効果が期待できます。青色申告をすると、赤字を9年間繰越で控除することが可能になります。また、法人で財務諸表などを作成することになるので、社会的信用が高まることにより、経営が順調であれば融資枠も増える可能性が高いでしょう。農業法人を設立することで、個人事業で農業を行うよりもさまざまな事務手続きが伴うことになりますが、その手間を考慮してもメリットは多いといえます。