農業に携わる人口の減少は、日本の将来にも大きく関わってきます。農業とはいわばその国の食を支える存在であり、農業がなければ自立した国づくりを実現することもできないでしょう。その一方で、そんな農業に対するイメージは決して良いものではありませんでした。農業は田舎っぽい、土臭いなど、多かれ少なかれ良くないイメージを持たれがちだったのです。しかし、そうした状況が変わりつつあります。会社を辞めて農業の世界に足を踏み入れる若者が増えているのです。なぜそうした若者が増えているのでしょうか。検証してみることにしましょう。
青年就農給付金が若者の就農を後押し
20代や30代で会社を辞めて農業を始める若者が増えています。これはいわゆる脱サラ農業ともいわれる現象ですが、なぜ若者は会社員というそれまでの生活を大きく一変させ、農業という世界に足を踏み入れるのでしょうか。これには、まずひとつに「青年就農給付金」という制度が大きな要因になっていると考えられます。新しく何かを始めるためには、当然大きな資金が必要です。そして、それは農業を始める際でも変わりません。それまでは、たとえ若者が脱サラをして農業を始めたくても、資金の問題から断念せざるを得ないことも少なくありませんでした。「青年就農給付金」とは、そうした若者向けに構築された給付金制度です。農業の研修期間中や就農直後の収入の不安定な時期などに、年間最大で150万円の支給を受けることができます。給付金を受け取るにあたっては制約もありますが、それでも20代や30代の資金力に乏しい若者にとっては、大きな支えとなる制度になっているといえるでしょう。
青年就農給付金ってどんな制度?
若者の就農を後押ししてくれる「青年就農給付金」とは、具体的にどのような制度なのかもう少し詳しく見ていくことにしましょう。「青年就農給付金」は、農林水産省が若者の就農を喚起する目的で、2012年からスタートした給付金制度のひとつです。これには、そもそも農業の世界に若者の数が少ないという背景があります。実際、39歳以下で自ら農地を取得して農業を始める人の数は、2010年にはわずか600人しかいませんでした。それがこの給付金制度が始まって以来、2013年には1,500人に、2014年には2,000人にまで急激に増加したのです。この「青年就農給付金」の特徴は、就農する前の研修期間中だけでなく、就農後の数年間も給付金を受け取ることができるということです。研修期間中は最長2年間、そして就農後は最長5年間にわたって、年間で最大150万円の給付金が支給されます。一方、研修後は一年以内に就農する義務があったり、就農後は最低でも5年間は農業を続けなければならなかったりなどの制約もあります。ただ、こうした制約を守れば、大きな資金源を確保することができる制度です。
参照元:http://next.rikunabi.com/journal/entry/20160616_1
脱サラ農業に向いているのはどんな人?
「青年就農給付金」のおかげもあって、脱サラ農業を始める若者は着実に増えています。ただ、農業というのはもちろん甘い世界ではありません。会社に勤めているときとは違って、すべてが自己責任ということになるので、やはり自分で考えて自分で行動できる人が向いているということができるでしょう。行動力や観察力も欠かせない資質のひとつです。それから、農業は意外とコミュニケーション能力が必要とされる仕事でもあります。農業と聞くとひとりで黙々と作業するイメージを持たれがちですが、実は近隣の農家とのコミュニケーションこそが何よりも大切だと考えられています。農具を借りたり種を譲ってもらったりなど、周りの協力なしには成立しない世界なのです。そして何より、農業が好きだという姿勢が、この世界で成功する近道になってくれるはずです。会社を辞めて農業の世界に足を踏み入れるのは、きっと生半可なことではないでしょう。それだけに、もし脱サラして農業を始めたいというのであれば、まず自分が農業を好きかどうか、また好きになれそうかどうかを考えてみるといいでしょう。