日本の農業は、高齢化と後継者不足という問題に長らく直面しています。国による対策も進められていますが、地域側からの協力もなければ、根本的な対策は実現しないでしょう。農業の担い手問題について、現在の日本の現状やその背景にある原因、そして現状・原因をふまえて求められる根本的な対策のありかたについてご紹介します。農業の高齢化・後継者不足問題を克服するためには、新規就農者をサポートするための包括的な体制構築がポイントとなります。
農業の担い手をめぐる状況
農業の担い手をめぐる問題として、大きく2点が挙げられます。1点目は現在の担い手が高齢化していること、2点目が次世代の担い手としての後継者が減少していることです。農林水産省の統計によると、平成22年の農業就業人口は約260万人で、うち65歳以上が約25%を占めていました。しかし、平成28年には農業就業人口が約192万人、うち65歳以上が約65%となっています。このように、農業就業人口が大幅な減少を見せているだけでなく、担い手の高齢化が進行しているのです。同じく農林水産省の統計から新規就農者の推移を見てみると、平成21年には約6万7千人だったのに対し、平成27年には約6万5千人となっています。ただし、平成22年?26年には6万人未満となっていたため、新規就農者数はやや回復したと見ることもできます。しかし全体として、農業従事者全体の減少と後継者としての新規就農者の減少傾向が続いていることは確かです。農業就業人口が減少するということは、食料供給の問題に関わるだけではなく、農村というコミュニティの維持にも関わる問題であり、根本的な対策が求められています。
出典元:http://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/08.html
根本的な対策とは何か?
農業就業人口の減少、さらに現役人口の高齢化と後継者不足という問題に対して、どのような対策が取れるでしょうか。まずこういった問題の背景にある原因を整理すると、農業への参入コスト、収益の不安定性といったものが挙げられます。近年、農業に興味を持つIターン・Uターン希望の若者も目立つようになりましたが、こういったコストと収益の問題が障壁になっているケースがあります。具体的にいうと、まず初期コストとしては農業を始めるための土地や住居の確保、農業用機械や機材の購入費、初心者の場合は技術習得のための研修費などが必要です。また、事業を開始しても肥料や機械のメンテナンス費用、人件費など、継続的にコストがかかります。また、農家の収入は一般的なサラリーマンに比べると不安定といえます。若者に対して農業のアピールをすることももちろん重要ですが、新規就農者を増加させるためには、こういったコスト面や収入面での対策が必要になるのです。
新規就農者の確保のために
新規就農者の確保のために、農林水産省では「情報提供、人材育成、研修への支援」や「経営スタートにあたっての農地の確保、機械や施設の整備への支援」を基本計画に盛り込んでいます。また、特に若者の就農やその定着をサポートするため、経営安定のための支援や法人雇用での就農の支援、地域のリーダーを育成するための経営教育などに重きを置いています。このように国ではさまざまな対策を進めていますが、地域側でも新規就農者へのサポートを進めていくことが大切です。たとえば、近隣の農家での協力体制の構築や風通しの良い団体・組織風土の形成、農業だけでなく暮らしトータルを支援していくようなサポートのあり方が求められています。また、自治体の補助金情報を収集し、誰でもアクセスできるように共有することも重要です。このように、新規就農者の確保のためには、国と地域とが足並みを揃えて対策を講じていくことが大切となります。UターンやIターンへの注目が集まっている風潮をうまく利用し、希望者にとっても農家にとってもメリットのある関係を構築していく必要があるでしょう。
出典元:厚生労働省http://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h23_h/trend/part1/chap3/c3_3_02.html