農業が注目の仕事として取り上げられることは多いのですが、一方で、「農業を始めて大きな売上を手に入れられた」という声はあまり聞こえてきません。もちろん、中には農業に新規参入してきて莫大な利益を手にした人もいますが、多くの人は現実にぶつかってしまうのではないでしょうか。 農業の素晴らしさを説明するときに「やりがい」や「自然と生きること」などはよく取り上げられますが、せっかく始めるなら利益を上げたいところです。ここでは農業で成功するための視点についてまとめました。
農業に新規参入する人は増えているが
近年、農業に対して素敵なイメージを植え付け、新規参入を促そうとしている現象が多く見られます。そのほとんどが、農業自体の素晴らしさをPRしていたり、自然と戯れながら生きることの充実感を煽ったりするものです。それらの着眼点が間違っているというわけではなく、むしろ、いずれも農業を行ううえで欠かせない要素だといえるでしょう。しかし、これらだけを賞賛する着眼点からは、農業が「仕事である」という視点が抜け落ちています。 農家になって、野菜や穀物を作りながら生活するためには、利益を上げ続けることが重要です。ライフスタイルとしての農業を押し出すだけでは、一時的に農業を始める人を獲得できたとしても、彼らを定着させることは難しいでしょう。農業においては、始めること以上に続けることが大切だといえます。そして、農業を続けるためには、ときにビジネスとして農業とシビアに向き合い、どうすれば利益が出せるかを分析することも重要になってくるのです。そうやって初めて、農業の真の大変さに気がつき、酸いも甘いも受け入れて農業に打ち込むことができるでしょう。
農業の現実を理解しよう
農業で利益を上げるための視点として、まずは「現状を把握する」ことが挙げられます。農業に新規参入してくる人のうち、80パーセントほどは挫折してしまうといわれています。成功する20パーセントの大きな違いが、現状に対応できているかどうかだといえるのではないでしょうか。 たとえば、農業を始めても既にノウハウを身につけ、大量生産している近隣の農家よりも良い作物を収穫できるか、保証はどこにもありません。仮に良い作物を作ったとしても、セールスのコネクションができていなければ、大きな利益を上げることは難しいでしょう。また、投資や償却という発想も必要です。農業ではトラクターなどの機材や、ビニールハウスなどの施設がなければ、作業を行えない場合もあります。そのときには莫大なお金がかかりますが、費用はどこから出すのか、借金をするならどうやって返済していくかなど、現実的な問題が生じます。 こうした面に目を背けて、「農業だけやっていれば楽しい」という考え方では、長続きしない80パーセントの仲間入りを遠くない未来に果たしてしまうことでしょう。
安易な参入を避けるようにしよう
続いて、「安易さを捨てる」という視点も重要です。新旧関わらず、農業で利益を上げられない農家には「安易さ」が共通しているといえます。何か問題に直面しても「頑張って働けばなんとかなるだろう」と考えてしまい、頭脳的に解決案を生み出す努力を放棄してしまうのです。これは、かつて農業が肉体労働であると認識されていた頃の名残でもあります。また、農業の現実面を見せてしまうと、新規参入者を減らしてしまうので、多くの企業や団体は、あたかも農業をガーデニングのような、手作業でなんとかなる業種のように見せかけてきたことも原因です。しかし、実際のところ、農業で成功を収めるためには肉体労働と同等に頭脳労働も必要なのです。人件費や材料費を考慮し、天候などのトラブルシューティングも確実に行ってこそ、農業は成立します。その気になれば、市場や八百屋を頼らなくても自力で販売のコネクションを生み出すことも可能でしょう。現代では多くの業種が新しいビジネスモデルを手に入れていますが、農業も例外ではなく、新しい価値観で挑むことで成功を手に入れられるでしょう。