個人事業主の場合は確定申告が必要不可欠ですが、農業を営んでいる、あるいは農業所得を得ているのであれば、同様に確定申告をしなければなりません。確定申告が必要とは言っても、申告をするにはやり方に関するさまざまな知識があるかが重要となってきます。特に、今まで確定申告をしたことがないのであれば、具体的な申告方法についてしっかりとおさえておきましょう。ここでは、農業の場合における所得の分類や申告の種類について紹介します。
農業収入は事業所得に分類される
所得には給与所得や事業所得、利子所得を始めとした数多くの種類が存在します。雇われて働いている場合や手伝っているだけの場合には話が変わってきますが、個人経営で農業を営むケースは事業所得に分類されるので覚えておきましょう。ほかにも、雑所得や譲渡所得などさまざまなものがありますし、農業のプロとして講演会を開くとなれば、それは雑所得扱いにはなります。しかし、農作物を販売して得た収入は事業所得扱いになりますから、原則的には他の種類の所得は絡んできません。
兼業であっても原則的に事業所得にしましょう。一度だけ育てた野菜を売ってみたなど、継続的に稼ぐつもりがない場合は雑所得扱いでも問題はありませんが、基本的には事業所得にすべきです。なぜなら、事業所得であれば所得税の面で雑所得よりも有利になるためです。節税するためという面で考えるのなら、事業所得扱いにするのを意識してみてください。
確定申告には白色申告と青色申告の2種類がある
農業収入に限ったことではありませんが、確定申告には白色申告と青色申告の2種類があります。どちらも所得を申告する方法としては変わりありませんが、その特徴の違いは大きいです。
簡便で初めてでも申告しやすい方法なのが白色申告ですが、節税効果はないという特徴を持っています。それに対して青色申告は申告に多くの書類が必要となり、手間がかかる代わりに控除額が大きかったり、節税効果が高かったりするのが特徴です。青色申告なら3年間の損益通算もできるため、もし赤字経営になったとしても、それを翌年の確定申告分に活かせるというメリットもあります。さらに、青色申告なら家族への給与を全額分必要経費とすることができるので、課税対象となる申告者の所得額を大幅に削減することもできるでしょう。このように、白色申告と青色申告は同じ確定申告をするためのものであっても、得られるメリットは全く違います。
農家では白色申告と青色申告どちらが多い?
農家で収入を得ているなら確定申告が必要となりますが、白色申告と青色申告ならどちらで提出するのが一般的なのでしょうか?実状について調査するため、どちらを提出するのかを聞いてみました。
- 【質問】
- 確定申告は白色申告か青色申告かを教えてください。
- 【回答結果】
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回答 回答数 白色申告 36 青色申告 42 調査地域:全国
調査対象:年齢不問・男女
調査期間:2017年06月21日~2017年06月28日
有効回答数:78サンプル
メリットの多い青色申告にする人が多め?
アンケートの結果、過半数の人が青色申告だと回答していました。
- 白色よりも手間がかかるが、家賃や光熱費を経費として計上できたり、家族の給与を課税対象額から差し引けたりするので。(40代/女性/正社員)
- 農業のほかにも収入があるから。(60代/女性/専業主婦(主夫))
- それなりの収入があるので(40代/男性/個人事業主・フリーランス)
青色申告による控除の恩恵を受けたたかったり、節税したかったりといった事情があると、こちらの申告方法を選ぶようですね。また、兼業で農業をしている場合も多いことがわかりました。収入を多く得ていると、必然的に青色申告を選んだほうが良いのかもしれません。半数には満たなかったものの、白色申告と答えた人も少なくありませんでした。
- まだ青色申告をするほど収入がないからです。しばらく白色です。(40代/女性/個人事業主・フリーランス)
- 手間がかからないからです。(20代/女性/個人事業主・フリーランス)
- 事業としての規模はないので白色申告で対応しています(50代/女性/専業主婦(主夫))
収入が少なかったり、事業と言えるほどの規模ではなかったりすると白色申告にする傾向にあるようです。こういった状況下では青色申告までする必要はないと思うものなのかもしれません。
アンケートの結果では、それぞれの申告方法に特徴があることから、自分自身のライフスタイルに合った方法を選択しているようですね。では、白色申告と青色申告について、もう少し詳しく見ていきましょう。
簡便な方法は白色申告
簡単かつ手軽な方法で確定申告がしたいということであれば、白色申告が向いています。農業所得の白色申告で必要な情報は、収入に関することと必要経費に関することです。
まず収入の記載方法ですが、農産物の収穫に関しての情報は、農産物の種類と収穫した日、その数量に関する情報を記載します。そして、売上や家事消費に関する情報は売上金額と取引した日、取引相手の記載が必要です。掛売上の取引を行っている場合は、納品書控を保存しているなら未入金の間の取引についての記載の省略が可能となっています。
続いて必要経費に関する項目ですが、農作物の収穫価格に関しては、収入時と同様で、農産物の種類と収穫した年月日、そして数量を記載してください。農産物以外の費用は取引年月日と金額、支払い先、そして経費が発生した事由について記入しましょう。具体的には小作料や減価償却費、雇人費がこれに当たります。
収入と必要経費のいずれも、米や麦などの穀物以外の農産物に関しては、収穫に関する情報は記載の省略が可能です。慣れていないと難しく聞こえるかもしれませんが、収入や取引に関係してくる情報を記載するだけですから、簡単に帳簿の記帳を行えるでしょう。
煩雑な手続きが必要だが控除額が大きい青色申告
青色申告を選択する場合は農業を始めてから2ヶ月以内に青色申告承認申請書を税務署に提出しておきましょう。事前に承認申請をしておかなければ、青色申告をしたくてもできないので注意しなければなりません。
青色申告は控除額を受け取れるのが魅力ですが、その申告方法と控除額の種類には実はさらに2つの種類があります。1つは10万円の特別控除が受けられる青色申告、そしてもう1つは65万円の特別控除が受けられる確定申告です。控除を受けるにはそれぞれ青色申告をする際に達成しなければならない条件が設けられています。特別な事情があるというわけではないのなら、多額の控除が受けられる65万円控除のほうを選びましょう。
65万円の特別控除を受けるには、その条件としてまず複式簿記による記帳があります。10万円控除の単式簿記よりも煩雑ですが、簿記に関する知識を習得すれば、面倒ではあっても決して難しいものではありません。ほかには、損益計算書と合わせて貸借対照表も添付する必要がありますが、こちらも同様に煩雑なだけです。これらの書類をきちんと提出さえすれば、65万円の控除を受けられますし、専従者給与や赤字の繰越といった恩恵がありますから、節税対策を徹底したいのなら優先して取り組むことをおすすめします。
まとめ
農業所得の場合でも確定申告は必要で、大きく分けて白色申告と青色申告から選ぶことができます。アンケートの結果を見る限りでは所得が少ないあいだは白色申告でも十分だとは言えますが、控除を受けたいのであれば迷わず青色申告を選んだほうが良いでしょう。基本的な手続きは一般的な個人事業主や自営業の人と変わりはありません。貸借対照表や損益計算書、収益内訳書などといった一部の書類については農業所得用に特化したものがありますから、そういった形式の書類を使うことを忘れないようにしましょう。