会社に勤めていると納税手続きは会社が行ってくれますが、農業で得た収入は基本的に自分で確定申告して税金を納めることになります。確定申告と聞くと、税金の知識がないと自分でやるのは難しくハードルが高いイメージを持ってしまいがちですが、まずはやってみることが大切です。帳簿付けに関しても、経理や簿記の知識がない人でも扱える便利な会計ソフトがいくつも出回っていますし、ポイントをしっかりと押さえておけば、それほど難しい作業ではありません。ここでは、農業を営む人に役立つ確定申告情報についてご紹介していきます。
帳簿付けの基本、農業の収入と経費とは
農業で得た収入からかかった経費が純利益となり、その利益に対して税金が課せられる仕組みとなっています。正確な納税額を算出するためにも、収入や経費の計算をきちんと行う必要が出てくるのです。農家の人は自分で栽培した農作物を売ってそれを収入としていますが、農協へ出荷する、訪問販売、軒先販売、スーパーや道の駅、農産物直売所に下ろすなど、いくつもの販売先があると考えられます。帳簿には売上のあった日付、販売先、販売金額を正確に明記するようにします。また、農作物を販売して得た収入以外にも補助金や奨励金という名目で収入を得ることがありますが、それらも収入として計上しなくてはいけません。農作物を作るためには、種や肥料、農業資材、トラックなどを使用したときのガソリン代、農業機器購入といったさまざまな諸経費がかかっています。それらが費用として計上できますので、購入した際の日付や品目、金額がわかるレシート・領収書は失くさずに保管しておくようにしましょう。
農作物を自分で消費、贈答したときは?
農家の人は自分で栽培した農作物を販売するだけでなく、自分で食べたり知り合いや親戚に分け与えたりすることもあるでしょう。農作物は収穫した時点で所得が発生するとみなされてしまうため、自分で作った農作物を自分で消費するときは、販売金額を「家事消費」として売上に形状する必要が出てきます。たとえば、販売用と自家消費分の畑を分けていて、そこから収穫した農作物を自分で食べるため、贈答用として消費した際は、あえて家事消費分として計上する必要はありません。ただし、その場合は自家消費分の農作物を栽培するためにかかった経費に関しても、経費として計上することができなくなりますので注意が必要です。さらには、収穫物の状態によっては販売品として出せない、B級品扱いになることもありますし、地域の炊き出しといった行事にボランティアとしてこれらの野菜を無償提供することも出てくることが考えられます。自家消費分に関してはさまざまなケースが考えられ、帳簿での処理をどうするべきかの判断が難しいことがあります。困ったときは、税務署に問い合わせたり確定申告前に実施される税理士無料相談などを利用したりしましょう。
不動産所得用の決算書が必要な場合とは
農家の人で農業所得を得ている以外にも、所有している土地や建物を貸し付けて所得を得ている人もいるかもしれません。それを不動産所得と呼び、農業所得と併せて不動産所得の確定申告が必要です。不動産所得の税金計算方法も農業所得と考え方は同じで、貸し付けによって得た収入から諸経費を引いた分に税金が課せられます。たとえば、アパートやマンション経営を行っている場合は家賃だけでなく契約更新の際の更新料、頭金、礼金、共益費などが収入として計上されます。修繕や退出の際に返金される保証金や敷金に関しては収入ではなく預り金扱いとなります。不動産所得の経費として計上できるのが固定資産税、建物にかけている損害保険料、減価償却費、修繕費などです。確定申告の際は必要書類に必要事項を記入して税務署に提出しますが、その収支がわかる内訳書も農業用と不動産所得用の二種類を提出する必要があります。また不動産所得が赤字となってしまった場合は、農業所得と相殺することができます。