これまで日本の農業のあり方としては、小規模で最低限の作物を作り、兼業で収入を補うケースが目立っていました。しかし、近年になって大規模農業のメリットがようやく見直され、参入する人々が増加するようになっています。 現在の日本では、農業において大きな転換期を迎えており、これからの時代を作る新しいモデルが研究されている途中といえます。ここでは大規模農業が注目されるようになった背景や、大規模農業の将来性について詳しくまとめていきます。
政府も積極支援する大規模農業のあり方
これまで、日本の農業で大規模農家が根付かなかった理由は、その伝統的な体質が理由の一つです。かねてより、日本の農業では「農業だけでは食べていくのが難しい」という思い込みがあり、農業の規模を拡大するにあたってのメリットよりもデメリットのほうが注目を集める傾向がありました。そして、税金や設備投資、生産物の単価の安さなども農業に新規参入しようという人を減らす要因となっていました。日本では一部の企業化した農家を除き、「農業とは細く長く続けるもの」という価値観が一般化していたのです。 しかし、近年、政府は農地集積バンクを立ち上げたり、新規の農業参入者に対して金融を緩和したりするなど、積極的に大規模農業を支援する方針を打ち出すようになってきました。その結果、従来の小規模な農業だけでなく、大規模農業として利益を上げていく、いわばビジネスモデルとしての農業のあり方が提示されるようになってきているのです。これまでのように「農業だけでは生活できない」という考えは「どうすれば専業農家は手を広げていけるか」という発想へと変わりつつあります。
TPPと農業の関係性について知ろう
政府が大規模農業を支援する背景には、環太平洋連携協定(TPP)の締結が大きく影響しています。TPPが目指すのは輸入食品の関税をゼロにすることであり、もしも実現すれば、食品産業には大きな変革がもたらされるといわれています。現在、米や麦などの主要輸出品の関税撤廃は行われていませんが、大幅に税率が引き下げられることは決定しています。農家は深刻なダメージを受けると予想できるでしょう。そのため、農業の規模を拡大し、国内の生産率を上げていくことが早急に求められているのです。 TPPによって関税が撤廃されれば、輸入食品の数は増え、日本の農家を脅かすでしょう。大量生産されていて安い外国の野菜、果物が市場を占めてしまう可能性も見過ごせません。日本の農業が対抗していくためには、農家の数を増やし、国産品の量を増やしていくことが必須です。政府が大規模農業をサポートしている現在、兼業農家は専業農家に切り替えたり、今まで迷っていた人は思い切って農業を始めてみたりするには絶好のタイミングだといえるのです。
大規模農業にはどんなメリットがある
もちろん、大規模農業にメリットがなければ、どれだけ政府から援助されようとも、多くの人が参入に躊躇ってしまうでしょう。大規模農業のメリットとしては何より、単純に田畑の面積が広くなるぶん、生産量が高まり、売上が増えるという点です。これまで兼業農家だった人も生産数を増やすことで、農業だけで収入を得ていくことが可能になります。 ただし、ここでよく言われる不安が「面積が増えれば投資も増えるのではないか」という考えです。しかし、コンバインやトラクターなどの機材が揃っている場合、面積が多少増えるくらいで大幅に作業時間が変わるということはありません。むしろ、広い土地の方が機材の性能をフルに発揮させることができるので、効率的に作業を進められます。作業時間の確保という問題もありますが、専業農家として頑張っていく決意があるのなら、会社とスケジュールの折り合いをつける心配がなくなります。アルバイトで人を一人雇うだけでも、労働時間の問題は解決に向かうでしょう。これからの農業のスタイルとして、大規模化は検討する価値があります。