馬には、大きく分けると「競走馬」と「乗用馬」として育てられる馬がいて、それぞれの馬が果たす役割は大きく違います。そのため、育て方にも違いがあり、どちらに携わるかによって仕事内容も大きく違ってくるでしょう。ここでは、競走馬と乗用馬の違いについてまとめています。
馬にはどんな役割があるの?競走馬と乗用馬の違い
競走馬は、競馬というレースで勝つことを目的として馬を育てます。馬主が所有する競走馬をレースで活躍させ、血統を次の世代に引き継いでいく繁殖も重要な仕事です。それに対し乗用馬は、お客様が安全に乗馬を楽しんだり技術向上したりできるよう育てるのが目的です。多くの場合、乗馬クラブが馬を所有し、一般のお客様に乗馬を楽しんでもらうというサービスを提供します。なかには、乗馬クラブでもお客様が自分で馬を購入できる「自馬」という制度もあり、所有することは可能になっています。ほとんどの乗馬クラブの馬が競走馬を引退した馬たちです。そのほか、オーストラリアやヨーロッパから生まれつき乗馬用の馬として生産された馬を、輸入するというケースもあります。馬が高度に人間と心を交わせる動物として「ホースセラピー」なども注目されています。競走馬を引退したのちに、子どもや障害者と関わり癒していくという取り組みです。競走馬引退後の馬のセカンドキャリアを考える団体もあり、今後も取り組みが期待されています。
レースで勝つための競走馬の育て方
競走馬は、牧場で生まれたあと数ヶ月間母馬と一緒の時間を過ごしたのち、引き離されるのが一般的です。仔馬の自立を促すためで、早ければ0歳、遅くとも1歳で競り市などに出され、オーナーが決まります。1歳頃から馬具に慣らしたり、人間の指示によって止まる、進むなどを理解できたりするように教え込んでいきます。これを「馴致」といい今後、騎手やスタッフが扱いやすい馬にするための大事なトレーニングです。「馴致」が終わったら、「育成」が始まります。本格的な調教を行う前の基礎体力を付ける期間のことです。小走りや簡単な追い切りなどメニューはさまざまで、非常に重要視されている部分です。その後は2歳春ごろからトレーニングセンターで調教用のコースなどでレースに備えます。「一杯」という全力を出させる調教や「馬なり」という馬のペースで走らせる調教、その中間で走らせる「強め」の調教をそれぞれ行い、馬を鍛えていくのです。また、コースを一頭のみで走らせたり、複数の馬で走らせたりということも行います。闘争心や勝負根性をつけることや、できるだけリラックスして走れるようトレーニングすることが目的です。さらに、ゲート内で暴れたり、ゲートが開いても出発できなかったりという馬はデビューできないため、ゲートでのスタートも教え込んでいきます。ゲート試験をうけ見事パスしたら、競走馬としてレースに出場できるという流れになります。
人間と楽しく触れ合うための乗用馬の育て方
常に馬のプロによって育てられ、専門的な技術や知識を要する競走馬の育成とは違い、乗用馬の育成は素人でも可能な育成方法とされています。なぜなら、乗用馬には素人でも扱える従順性や素直さが求められるからです。いくらプロの言うことは聞けても、一般のお客様のいうことは聞けないとなると問題です。あくまで人間と共存し、心を分かち合える関係性として育成していく必要があります。そのため、「怯えさせない」「上下関係を理解させる」「我慢を覚えさせる」「従順である」というルールを教え込んでいきます。生後6ヶ月から3歳までの間に徹底した育て方をすることで、乗用馬生産育成が成功したといえます。その期間に一度でも悪い癖がついてしまうと、なかなか治らず、治ってもいつ危険な動きをするかわかりません。三つ子の魂百までという言葉のように、初期段階においてのルールやマナーの教え込みが大事といえます。