デフレと農業

デフレ経済がもたらす日本人への影響は計り知れないものがあります。私生活においては、長時間低賃金労働に始まり、日用品やファストチェーン店の値下げ合戦…。これに伴い食品もデフレ化が進んでいますが、安いものには裏がある場合も多いと考えられています。
日本の農作物・畜産物・乳製品は高品質ですが、それは各農家が技術だけでなく、時間と労力を費やして育ててくれた安全な農作物だからです。TPP締結により、今よりも更に諸外国からやすい農作物が輸入されてきます。現在のデフレ経済の影響を受けたままであれば、日本の農業の衰退に繋がる可能性もあります。そこで当コンテンツでは、日本農業は何をするべきか?、日本の農業が進むべき道は?、未来を見据えた農業とは、といったテーマを元に記事を挙げております。

現在日本の抱える構造的問題とデフレ

現在日本の抱える構造的問題とデフレ

まずはじめに 現在、日本は戦後高度経済成長期、バブル経済の崩壊を経て長い不況の状態が続いています。雇用体系も非正規化、さらにはホワイトカラーエグゼンプションによる残業代のカットなど、以前では考えられないような過酷な状況が生まれつつあります。また、少子高齢化によって生産人口が減少し、このままでは社会保障や税金も危険な状態になりかねません。この項では、農業というテーマを語る上で、現在日本社会が抱える構造的問題、デフレ経済というテーマで考えていきたいと思います。 日本の構造的問題 現在、日本の少子高齢化は激しく加速し、生産人口が著しく減少し、政府で人口維持の議論や、移民政策など多くの法整備が急がれています。これは、年金や国民健康保険といった社会保障において、生産層が受給層=高齢者を支えるというシステムが、生産層が著しく減少した場合、破綻しかねないためです。本来は、少子高齢化はもっと具体策をもって挑まなければならなかった政策のはずですが、旧来の政治家の怠慢、予想はずれなど多くの原因があります。しかし、これから迎える団塊の世代の大量退職、年金原資の枯渇など、日本が抱える構造的問題はあまりに大き

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デフレと食と日本の農業

デフレと食と日本の農業

デフレが日本人の食も変えたこと 長いデフレ経済で、日本人の食に対する考え方も変わりました。牛丼屋は値下げ勝負で原価ギリギリの食品を販売し、消費者は給与が上がらないためこれらを歓喜して受け入れました。安くて、そこそこのものが食せることを知ってしまったのです。当然、お金をだせば良い物を食せることは誰しもが解っていることです。しかし、富裕層以外は厳しい家計に苦しめられ、安い物を求める癖がついてしまいました。 食のデフレ化がもたらすもの 食のデフレ化は、もちろん原価を極限まで下げることで可能になりました。酷い業態では人件費もギリギリに抑えるため、繁忙期も少ない人間で回さなければならなくなり、ブラック企業という固有名詞も生まれました。食のデフレ化は、質の低い食材を利用することで可能になります。たとえば、外国産野菜や外国産の安価な肉類、加工食品を使うことで販売価格を抑えることが出来ますが、これらは安全基準、農薬の使用量など不安の残る食材でもあり、自身の健康と交換に安い食品を選ぶ事になります。要するに、安い物には必ず裏があるということなのです。 食のデフレ化から脱出するには しかし、一度安いという概

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食の安全と外国産農作物

食の安全と外国産農作物

注目される食の安全 本題の農業改革を語る前に、昨今重要な議論となっている食の安全を考えていきましょう。ここ数年、生食肉での集団食中毒、死亡事件や、食品偽装問題、中国の輸入食品における毒性など、さまざまな食の安全をめぐる事件がありました。デフレ化した日本経済で、安く品質の悪い食品が多く流通したため起きてしまった事件で、大きな社会問題になりました。これらのことから、安くても危険な食品は食べたくないという意識が大きくなってきました。昨今、食の安全は食品を選択する際に、多くの日本人が意識するテーマとなりました。 外国産食品の落とし穴 安い食品を選ぶ際、外国産を購入する人も多いと思います。しかし、外国人は日本人とは全く違う価値観の人種です。たとえば、農業に関しても、日本人と同じ安全意識を持っているかどうかは実際に生産者の生産方法を見ないと判断できない状況です。国の検査は実施されますが、実際にどの期間、どの薬剤を使って育成されたのかまで、細かく調査するのは困難です。ですので、やはり安い野菜や肉などの食品には裏があります。たとえば、遺伝子組み換えであったり、抗生物質だらけで育てた肉であったりします。

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米国に見る農業の合理化と質

米国に見る農業の合理化と質

アメリカ式の農業とは アメリカで生産される主な農作物と言えば、トウモロコシ、小麦、大豆などが挙げられます。アメリカでは、1950年代以降、農業の工業化と大規模な農業企業が広大な敷地で、低コストな生産を可能にしていきました。たとえば、農薬散布もヘリコプターを使ったり、機械化、工業化が人件費コストを縮小し、莫大な生産量を誇る大規模農場を少人数の労働者で管理するといった農業モデルが完成しました。 アメリカ式農業の危険性 しかし、大量に農薬を使用したり、遺伝子組み換え作物を利用するなど、アメリカ式農業で生産された農作物には人体への影響も懸念されるものが多々あります。大量に収穫する訳ですから、確実に育成する必要が出てきます。そのためには化学肥料や農薬、害虫に強い遺伝子組み換え作物の必要性は非常に合理的です。しかし、前項でも述べた、食の安全が謳われる中、これらの農作物は本当に安全、安心なものと言えるでしょうか?また、アメリカ式大規模農業は、土地の使い捨ても問題になっています。これらは、大量に使用する農薬、化学肥料のため20年程で塩害が起こり、その土地では農業が出来なくなってしまうためで、大きな環境

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TPPに見る農業のグローバル化

TPPに見る農業のグローバル化

TPPと日本の農業 現在、進行中案件である環太平洋パートナーシップ協定(=TPP)ですが、これらは日本の農業のこれからに一石を投じる重要な協定です。一部の議論では、日本の農業を破壊する、食の安全が崩壊すると一様に叫ばれていますが、本当にそうでしょうか?今まで続けてきた保護政策としての農業はいずれ破綻します。国家予算の問題もあるでしょうし、農業従事者の高齢化も大きな問題です。TPPはある意味では、日本の農業の構造を変える大きなチャンスとも取れるのではないでしょうか? TPPが日本の農業に与える影響 TPPは基本的に関税を撤廃して、協定締結国間で自由に貿易、販路の拡大を出来る様にする協定です。言ってしまえば、生産力、合理性の高い企業がグローバルに展開し、利益を上げることが出来る協定です。確かに、今の状態でアメリカやその他の国の、安価で生産力のある農作物が輸入されてきたら、日本産の農作物は勝てないと思います。しかし、それは保護政策を続け、国際競争力を培ってこなかった日本の農業に問題があるのです。日本の農業の良い部分を合理化し、日本人が大事に考える食の安全をクリアできる農作物を作ることが出来れ

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これからの日本の農業が目指すべき道

これからの日本の農業が目指すべき道

諸外国に負けない農業を目指す TPP締結が現実のものとなりそうな近年、日本の農業は構造的改革が必要と言えます。まず、このままTPPが締結されると、恐らく外国勢は日本の農業への補助金を廃止するよう迫りますから、ほとんどの農家は厳しい状況に追い込まれるでしょう。しかし、出来るだけ早く農協の独占状態を辞め、一般資本の参入がしやすい状況を作れば可能性は出てきます。今の農業従事者にとって必要なのは多彩な販路と、多様な販売形態です。これが無いと、質の高いものも評価されずに終わってしまいます。また、農業に大企業が参入して、合理化、より安全な技術開発をすることは、高品質、低コストな農作物を作れるチャンスになります。日本の技術力は先進国内でも最先端ですから、産官学全てが連携して技術開発を急ぐべきです。 大規模化、合理化、低コスト化と安全な農作物 諸外国に負けないためには、農業の大規模事業化、作業合理化、作業合理化による機械化、低コスト化が必須の条件と言えます。これらを達成しなければ、生産性、コストにおいても国産の農作物は負けてしまいます。現在日本の農業に必要なのは国際競争力になり始めています。しかし、保

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農業の大規模化と少子高齢化問題の逆利用

農業の大規模化と少子高齢化問題の逆利用

農村が抱える少子高齢化問題 現在、日本は急激な少子高齢化が進んでいて、最近のニュースでは2040年までに多くの自治体が消滅する可能性があると報じられました。少子高齢化は東京の一極集中化を推進してきましたし、農業においても後継者不足など深刻な問題を生んでいます。また、後継者がいない農家では、耕作放棄地や農業自体を辞めてしまう農業離れも大きな問題と言えます。また、自治体が消滅していく場合、多くの予算を費やしてきたインフラ整備も無駄なものになってしまいます。これらを逆に活かしていく手法はなにかないのでしょうか。 消えゆく地方に大規模農場を しかし、前項で述べたことに絡めて良い方法があります。耕作放棄地の多い地域や、人が少なくなった自治体に大規模農業を展開できる企業を誘致するのです。こうすることで、日本国内での合理的な農業の展開が可能になりますし、その地域での雇用も生まれます。また、整備されたインフラは残りますから、そのままインフラを使えるので投資費用が必要ありません。税収だって見込めるのです。保護政策を辞め、競争原理の中に農業を置くのに反対の人は多いでしょう。しかし、外国勢の農作物と勝負して

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日本産農作物のブランディング戦略とは

日本産農作物のブランディング戦略とは

安全というブランド 先程は、大規模化、合理化、低コスト化が国際競争のために農業に求められることと述べました。これは、一般企業では昨今当たり前の概念です。しかし、国産農作物がこれだけの条件では、外国産の安くて流通量多いが、不安の残るものになってしまいます。そこで、日本にしか出来ない技術を使って、より安全な農作物を生産しブランディング戦略を立て海外に売り出すのです。近年では、レタスの無菌栽培の工場が注目されました。まだ、開発中の技術だと思いますが、実現できれば農薬などを使用せず農作物が生産可能になるでしょう。また、こういった日本人にしか作り出せない技術を、大規模な合理的農法に取り込んでゆけることは充分可能性があります。安全、安心をブランドに国内、国外に売り込めば、日本において農業は充分に収益のでる、可能性のある産業になるのではないでしょうか。 面白い野菜ブランディング戦略 また、90年代以降、外国で生まれた、または親しまれている、日本人に馴染みの薄い農作物が日本にも入ってきました。たとえば、アボカドなんてその代表的な例ではないでしょうか。しかし、そのアボカドも現在ではどこのスーパーでも見か

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未来を見据えた農業にしよう

未来を見据えた農業にしよう

長々と書いてきましたが、さいごにこれからの農業がどうあるべきか、どうやってグローバル化に耐えうる農業に変革していくのか、考えてみましょう。まず、補助金や優遇策による農業保護は今、この時の農業従事者にしか恩恵を与えません。確かに、一度得てしまった既得権益、競争の不要なことはなかなか手放せないのは理解できます。ただ、これからの世代が農業に興味をもっても、実際に関わっていくことが出来ないのも事実です。より競争力のある、夢のある農業の実現には現状の農政では不十分なのです。 どんどん新規資本が参入できる産業にしよう これからの農業に一番重要なのは、新規法人、資本の参入を促すことです。TPPにより、輸出ビジネスとして農業は可能性が見えてきます。これに対して、外国産の低コストな農作物に負け、農村が疲弊していくだけでは産業として勿体なさ過ぎます。農業にどんどん国内での競争原理を取り入れて、より良い物を市場に供給できるシステムを構築することが急がれます。また、高品質なものを生産できるよう、技術面で産官学が一体となって、国を挙げての産業にする必要があります。そして、大規模化、合理化、低コスト化を目指し、同

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これからの日本に必要な農業とは

これからの日本に必要な農業とは

まずはじめに 現在、日本ではTPPによる農作物の輸入自由化の問題や、農協の改革といった農業に関する自由化、改革が多く議論されています。また、多くの農村では少子高齢化の影響で、耕作放棄地が発生するなど多くの問題が表面化しています。これからの日本が目指すべき農業とは、一体どのようなものなのでしょうか?考えてみましょう。 疲弊する農村とグローバル化 長年続いたデフレ経済で、農業は疲弊しています。単価の安い農作物ばかりを消費者は求め、海外産の安い農作物が溢れ、商売としての国内の農業は厳しい状況であります。また、補助金に頼る従来型の農家のあり方は、TPPなどの農業、農作物の流通のグローバル化の元、合理化されていく可能性があります。外国の農業はアメリカや北米などを見ても非常に合理的で、大規模農園を大規模な設備で、少人数、小コストで経営するという手法で、日本型の農業と勝負しても勝ち目はありません。値段が安く出来るのは、前者であることは間違えないからです。 合理化+質の向上でブランド農業を 日本における農業の合理化は重要な課題です。法人が参入して、大規模な農業を展開する必要がありますが、現状さまざまな

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