農業の要 土を考える

a0002_002554原点は土

土は言うまでもなく、野菜や果物を育て私たちを養っています。 しかし私たちは普段土に触れる機会もなく、土を意識することはありません。 土は気候・生物・地形といった自然の要素により変わりながら相互に作用し合って、長い時間を経て今の姿になっております。 しかし世界ではこの大切な土が砂漠化し、日本でも土壌が汚染されています。このような状態を作り上げたのは自然現象だけではなく、人間の自然を無視した行動が引き金となっています。 生産者であり分解者の土は、農業にとってとても重要な役割を果たしています。 作物の出来にも人間の健康にも大きな影響を与える土について改めて考えてみたいと思います。 日本の土には様々な種類があります。国土面積の17%は表土から下層土まで火山灰という土です。また水持ちの悪い砂丘の土、水はけが悪く水田に適した沖積土壌、西日本の畑に多く存在する赤く締まった土などがあります。雨が多い日本の土はほとんどが酸性です。お茶は強酸性の土を好む一方、ほうれん草は酸性に弱いため、炭酸カルシウムや苦土石灰で土の酸性を中和させ育てる必要があります。 身体とそのおかれている風土は一体という「身土不二」の考え方がありますが、その土に含まれる成分が少なすぎたり多すぎたりすることで、そこで育つものを食べ続けることで病気を引き起こしているケースもあります。その土地のものをただ食べるのではなく、その土地の成分を知って食べることも大切です。

砂漠化

また、日本の約95倍に相当する地球上の陸地の4分の1(36億ヘクタール)が砂漠化の影響を受けていると言われています。世界の砂漠は毎年6万平方キロメートルの早さで広がっております。また灌漑農業が塩害を引き起こし砂漠化の原因の一つにもなっています。世界全体で、自然降水を有効利用して適切な期間休耕させ、土地管理・水管理にしっかり取り組むことで砂漠化を出来る限り食い止めなくてはなりません。 日本ではまた、土壌汚染問題があります。過去には足尾銅山の鉱毒事件があり、現在では放射能の問題があります。汚染された水が土壌を通り抜ける過程で重金属が土に吸収されるため、土壌が徐々に汚染されていきます。 植物や微生物を使った汚染物質の除去法などもありますが、まだまだ完璧なものではありません。私たちが健康を守るために今できることは有害危険物質を減らす努力と有害危険物質から土を守ることだけです。 農林水産省では、物質循環機能をもつ土を活かした、化学肥料や農薬を減らした持続可能な農業を規定しています。 私たちは自然の中の土で生まれた食物のいのちをもらって生かされていることを再認識し、いのちの循環を行っている土にもっと感謝しながら、環境に配慮した生活・行動をとっていく必要があります。