なぜ?食い止めたい!深刻な若者の農業離れ

 

ha01_01_1農業就業人口が減少している原因のひとつは、若者の農業離れです。先進国の中でも圧倒的に食料自給率が低い日本。実に食料全体の6割を輸入に頼っています。少子高齢化のために人口が減少し続けている日本に比べ、世界の人口は増加の一途を辿っています。世界的に見ると農地不足、食糧不足の国が多く、将来的にそれぞれの国が輸出を制限する可能性もあります。食料自給率を上げるためには農業就業人口を増やすことが重要で、そのためには若者の農業離れを食い止めることが必要不可欠です。

現代農業の現状… 高齢化と若者離れ

ha01_01_2農業就業人口がどのように推移しているのか、その現状を確認してみましょう。農林水産省による農業構造動態調査および、5年毎に行われている農業センサスの調査によると、2010年には260万人だった農業就業人口数が、2015年には209万人に、翌年2016年には200万人を割る192万人に、2017年の概算値では181万人になっています。2010年から2015年の間の離農者はおよそ50万人。その後も毎年平均で9万人が離農しており、このままの減少傾向が続くと5年後の2020年には45万人の離農者が出ていてもおかしくありません。農業就業人口のうち65歳以上は、2010年だと160万人、2017年は概算値で120万人。2010年の時点で65歳以上の割合が全体の61%だったのに対し、2017年では66%と5%も上昇しています。農業人口が減っているにも関わらず65歳以上の割合が増えているということは、高齢を理由に離農する人口もさることながら、就農する若者がかなり少ないことを表しています。農業就業人口の平均年齢は2016年で66.8歳です。平均年齢が定年退職の年齢を超えているため、このまま若者の農業離れが続くと、この先はさらに農業就業人口の高齢化が進み、農業は衰退の一途を辿ります。就農する若者を増やすための対策が、現代農業の急務と言っていいでしょう。

農業をやりたい?農業のイメージとは?

ha01_01_graph仕事として農業をやりたいと思う人がどのくらいいるのか、100人の男女を対象にアンケートを実施しました。

【質問】
仕事として農業をやりたいと思いますか?
【回答結果】
回答 回答数
思わない 74
思う 26

調査地域:全国
調査対象:年齢不問・男女
調査期間:2017年08月02日~2017年08月09日
有効回答数:100サンプル

農業は甘くない!仕事としては敷居が高いイメージ

100人中74人が仕事として農業をやりたいとは「思わない」と答えました。

  1. 1年365日、休みがないと思う。天候にも左右されるし、安定した収入の確保ができるのかが心配で、踏み切れない。(30代/個人事業主・フリーランス/女性)
  2. 祖父母が専業農家で、体力・天候その他いろいろな要因で苦労している姿を見てきました。それと同じ苦労、努力を自分が背負っていく自信はありません。(30代/専業主婦(主夫)/)

天候による収入の不安定さに言及している回答が圧倒的に多かった印象です。では、仕事としてやりたいと「思う」と回答した人の意見も見てみましょう。

  1. 自然の中で、はっきりとしたやりがいを感じることができるからです。(30代/パート・アルバイト/女性)
  2. 本業から脱サラして農業に転職までする勇気はありませんが、週末を利用して複数人数で共同経営したり、運営は第三者に委託したりという形で農業に関わりたいとは漠然と思っています。(30代/正社員/男性)

自然の中でやりがいを感じたいという人が多いようです。
全体的には、農業は収入、時間、体力などさまざまな点を考慮に入れても、仕事にするのは厳しいと感じている人が多いことがわかりました。

稼げるとは限らない!農業離れの原因とは?

ha01_01_3若者の農業離れが続いている原因のひとつは、初期費用やその後の経費がかかる割に、必ずしも稼げるとは限らないからです。就農するには土地や農機具が必要です。農園の規模にもよりますが、就農のための初期費用は数百万円単位になるのが一般的。新卒からの就農はもちろん、脱サラからの就農でも年代が若いほど貯金の額は低い傾向にあります。農家になるための初期費用の高さは、若者にとってハードルが高いと思われる要因になっています。費用面をクリアして就農したとしても、それで食べていけるかは実力と運次第です。おいしくて立派な野菜を育てる知識はもちろんのこと、育てた野菜を売るための販路をどう築いていくかが重要で、経営者としての腕を問われます。また、農業は体が資本ですから体力がなければ続けられません。毎日朝早くから起き出して仕事をするのが基本です。会社員のように決まった休みはなく、1人農家や家族経営の場合は特に休みがなくなることも珍しくありません。常に屋外で活動するため、夏は暑く冬は寒いという労働条件のなか、毎日農作物と向き合って働き続けられる体力が必要です。資金、収入、体力などさまざまな面をクリアできないと継続していくことが難しい点が、若者の農業離れにつながっています。

就農をめざす若者を増やすための秘策は?

深刻な若者の農業離れを解消するために、国ではさまざまな支援を用意しています。研修中の2年間で150万円を支援してくれる農業次世代人材投資事業の支援、就農する青年を支援するために5年間で150万円を支援してくれる青年等収納計画制度のほか、農機具や施設の導入に際して無利子で支援してくれる経営開始型の施策もあります。農業は特に最初の数年は利益が上がらないことが少なくありません。資金援助をしてもらえる期間内に農業や経営に関するノウハウを身につけて事業を軌道に乗せることが、就農成功の近道。これらの施策は若者の就農に対するハードルを下げるひとつの要因になるでしょう。ここ数年では「スマート農業」をいかに浸透させていくかにも注目が集まっています。スマート農業とは、ドローンやロボットなどのIT技術を農業に導入することで農作物の生産効率を上げる農業のことです。農業は自然が相手ですから、完全に生産性をコントロールするのは難しいです。しかし、最新技術を導入することによって、重労働の軽減や人手不足を解消することができれば、これまでの農業に対するネガティブなイメージを覆すこともできるでしょう。

まとめ

農業就業人口の減少は、日本で暮らす私たち全員にとって見過ごすことのできない事態です。これを食い止めるには若者の就農が欠かせません。高齢化と人口減少を食い止めるために、若者にとって希望のある農業の姿を提示していくことが重要です。これまでの農業を引継ぐとともに新しい風を吹き込むことが、農業界の活性化につながります。どうすれば誰にとっても魅力的な仕事になるのか、これから考え続けていかなければならない課題と言えるでしょう。

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