新規就農者の数が少なく、減少に歯止めのかからない農業就業人口。しかし、実は農業が若者の間のブームになっています。農業を志す若者が増えている理由は複数ありますが、ブームは必ず終わりがくるものです。どうすれば一過性のブームで終わらせることなく、若い世代の新規就農者を増やしていくことができるのでしょうか?今回は農業が若者の間でブームになっている理由を検証し、日本の農業を活性化させていくために大切なことを考えていきます。
農業の良いイメージってどんなの?
キツイ、汚いなど、ひと昔前はネガティブなイメージで語られることの多かった農業。現在、ポジティブなイメージとして農業はどのように捉えられているのでしょうか?
自然と寄り添う姿が見えてきた!農業は安全で穏やかなイメージ
- 自分が育てた野菜だと安心して食べられそう、子供がいたら野菜の育つ過程や収穫を体験させてあげられて良さそう。(30代/専業主婦(主夫)/女性)
- 野菜や米づくりを通して環境保護に貢献することができることがとても良いと思います。(30代/専業主婦(主夫)/女性)
- 「自給自足」することで外国に頼らずに生活できること。「地産地消」することで安心して地元の野菜を口にしたり地域にお金が回ることで活性化が望めたりすること。(30代/正社員/男性)
- 自然に囲まれ、満員電車通勤などの煩わしいことがなく、穏やかに過ごせそうなイメージがあります。おいしい収穫物が食べられそうです。(30代/専業主婦(主夫)/女性)
- 田舎。穏やか。自然と生きる。スローライフ。どんなに産業が発達しても最終的には第一次産業が勝利すると思う。ただ作る才能と商売をして稼ぐ才能は別なので、そのへんの仕組みを整えて流行りのロボット導入で人件費が抑えられたら将来的には大きな可能性があると思います。(30代/正社員/女性)
アンケートの結果から、多くの人が農業は自然と共存するための生き方だと捉えているようです。ストレスの多い都心の生活から離れて、人として従来の生き方ができるというのが現代の農業像であることがわかりました。
- 【質問】
- 農業に対して抱く良い面でのイメージを教えてください。
- 【回答結果】
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フリー回答
調査地域:全国
調査対象:年齢不問・男女
調査期間:2017年08月02日~2017年08月09日
有効回答数:100サンプル
農業がブームになっているのは本当?
食への安全性や働き方の変化により、農業に対しての考え方が従来とは変わってきています。特に若者の間では農業に対して良いイメージを抱くケースも多く、農業に興味を持つ若者が増えています。農業に対してポジティブなイメージを持つようになった要因として考えられるのは、一定数の若者の間にスローライフという考え方が浸透してきたことにあります。スローライフは、バブル時代に幅を利かせていた大量生産・大量消費の考え方に対抗するようにして2000年代に登場しました。地域の食を大切にする地産地消や、人間らしい生活を取り戻すための生活を大切にする考え方で、過疎化が深刻な村々を活性化させるために地方に戻る若者も増加しています。これに付随して職業としての農業を考える人が多く、若者の間で農業がブームになっている原因もここにあるようです。子どもには安全でおいしい野菜を食べさせたい、ギスギスした都心ではなく自然の中でのびのびと子どもを育てたいなどと考える若い親も多いです。地方へ移住するとなると大変なのは職探しですが、家族を養うためのひとつの手段として農業を考える世帯も増えています。
農業のイメージをクールに変える!
実際に就農した若い世代によって、農業のイメージが変わってきています。一番わかりやすい例は、農作業におけるファッション。日焼けや虫刺されなどから身を守るために、機能性とファッション性を兼ね備えた洋服ブランドが登場しています。古くから労働着として着用されてきたモンペを可愛らしくアレンジしたり、スタイリッシュなつなぎを着こなしたりなど、「かっこ悪い」「ダサい」という昔ながらの農業のイメージを払拭しています。従来の栽培方法や販路に頼らない就農者も増えています。インターネット販売で農産物を販売したり、個人経営のレストランに卸したりなど、農協に加入しないことで自ら経営の可能性を広げています。農協に加入すると販路に頭を悩ませることがない反面、農産物の栽培方法や品種などに制限がかかる場合があります。農協に加入しないことで、自分の作りたい野菜を作りたい方法で栽培できるのが最大のメリット。webサイトやSNSなどを駆使すればいくらでも自分の農産物の特徴をアピールすることができます。農協に加入するかしないかのメリット・デメリットは人によってそれぞれで違います。しかし、自分のやり方を貫くことは理想の農業を追求することにつながり、可能性を試したいと思っている人にとっては有効な手段になります。
ブームで終わらせないために!就農にあたっての心構え
農業の良い面や可能性について説明してきましたが、農業が大変な仕事であることに変わりはありません。いざ就農できたとしても、栽培や経営がうまくいかずに途中で離農してしまう新規就農者も多いのです。一過性のブームで終わらせないためには、先輩農家が新規就農者一人ひとりに就農にあたっての心構えを伝えることが大切です。途中で離農してしまう原因のひとつは、独立前に資金がつきてしまうケース。現在は国による支援制度が充実しています。たとえば、青年等就農計画制度では年間150万円の融資を5年間連続で受け取ることができます。本来の農業で利益がでなくても150万円あるから大丈夫と安心してしまうと、支援が終わると同時に離農を考えなければならない事態に陥ります。農業もほかの自営業と何ら変わりません。農業の技術を学ぶのはもちろんのこと、経営者としての感覚を養うことも重要です。また、農協に加入するかしないかは別にして、地域でのコミュニケーションを大切にする姿勢も必要です。農業において困ったことが起きたとき、近所に相談できる先輩農家がいると、とてもありがたいものです。保守的な思考が強い地域もありますので、どこで何を作るかを決めたら、仕事がしやすい環境かどうかをあらかじめリサーチしておきましょう。
まとめ
たとえブームであっても、農業に対して多くの注目が集まるのは良いことです。就農に際してのハードルも、ひと昔前と比べたら格段に下がりました。農業が厳しい仕事なのに変わりはありませんが、業種や職種に関係なく、自営業は厳しいものです。今はインターネットが普及し、自分なりに働きやすい環境を作ることもできます。もし農業に興味があるのなら、本当に職業として従事したいのかを考え、常に勉強していく姿勢が大切です。
詳しくは、農業就業人口の減少が止まらない!若者が農業に興味を持つポイントはある?をご参照ください。