高齢化と若者の農業離れのために農業就業人口が減少している日本。ところが、一部の地域では就農をめざす若者は増加傾向にあると言われています。ひと昔前は「キツイ、汚い、かっこ悪い」の3Kと呼ばれていた農業を志す若者が増えているのはなぜなのでしょうか?今回は農業を取り巻く現状と就農をめざす若者が増加している理由を検証するとともに、従来の方法にとらわれない未来志向型の農業のあり方について解説していきます。
実は以前と比べて農業を志す若者が増加中
農業就業人口は年々減少の一途を辿っています。農林水産省の調査によれば、日本の全人口に対する農業就業人口の割合は2010年で5.1%だったのに対し、2016年では3.7%まで落ちています。総人口に対する65歳以上の農業就業人口の割合は2010年の22.8%から、2016年では26.9%まで上昇しており、農業就業人口の減少とともに高齢化が速いスピードで進んでいることがわかります。この数字だけを見ると、若者の就農者が増えているとは思えません。しかし、農林水産省による平成27年新規就農者調査を見ると、49歳以下の新規就農者は2010年時点で約1万7千人だったのに対し、2015年では約2万3千人まで増加しています。44歳以下の新規就農者も2012年の約1万7千人から2015年には約2万3千人まで増えています。この調査結果から、49歳以下の新規就農者の増加に対し、高齢を理由に離農する農家が多いことが、農業就業人口の減少と高齢化の原因になっていることがわかります。しかし、若者の就農者が増加しているのは紛れもない事実。今後さらに増加傾向が続いていけば、日本の農業界にも明るい光が差し込んでくるでしょう。
なぜ?農業をやりたい若者が増加している理由
なぜ農業をめざす若者が増えているのでしょうか?理由のひとつは日本社会で長く続く就職難にあります。1980年代後半にバブル景気が弾けて以降、大学を卒業して当たり前のように就職できる社会は終焉を迎えました。2015年以降、大卒の就職率が上昇してきたとはいえ、まだまだ仕事にありつけない若者は多いです。そんな若者たちがなんとか職を得るために目を向けた職業のひとつが農業というわけです。農業就業人口の高齢化を食い止めるため、国が新規就農者向けにさまざまな支援制度を設けたことも、若者を就農へ向かわせる大きな動機になっています。農村の活性化を図るために若者を農業に呼び込もうと努力する自治体も増えてきました。親族に農家がいない人でも農業の勉強ができるように、さまざまな研修制度を設けています。また、食の安全性に目を向ける人が増えているのも、理由のひとつです。スーパーの野菜売り場には無農薬、オーガニック、有機栽培などのキーワードが並ぶようになりました。多少値段が高くても、生産者の顔が見える安全な野菜を購入したいという消費者ニーズは、就農する若者の増加にひと役買っています。さらに、化学やIT技術の進歩により、農業が学問として認識され始めていることも若者就農者の増加を促しています。
ネット購入って便利!農家の野菜を買ったことある?
野菜を購入できるのはスーパーや直売所だけではありません。今回は通信販売で農産物を購入したことがあるかどうか、100名の男女に聞いてみました。
- 【質問】
- 農家から通販で農産物を購入したことはありますか?
- 【回答結果】
-
回答 回答数 ない 64 ある 36 調査地域:全国
調査対象:年齢不問・男女
調査期間:2017年08月02日~2017年08月09日
有効回答数:100サンプル
通販で農家から直接買う野菜は安全でおいしい!
農家から通販で直接農産物を購入したことのない人が、半数以上であることがわかりました。
- 安全だし美味しそうですが、高いイメージがあるので購入したことはありません。一度にたくさん届くと、食べきれるかどうかという問題もあります。(40代/専業主婦(主夫)/女性)
有機栽培や無農薬の野菜は通常より値段が高くなる傾向にあり、通販の場合は送料もかかるため購入しない人が多いようです。また、少人数の家庭では量の多さも懸念されるようです。通販だと自分で野菜を見て選べないのが逆に不安だという声もありました。
一方、購入したことのある人の意見はというと、
- 相当前から農家さんから直接買っています。国産、誰が作っているのかわかる、というのは安心感があります。基本的にビニールハウスなどではなく、畑で育てたものがくるので季節感が感じられるのも好きです。(20代/学生/女性)
- ネットで買えるなんて便利になったという気持ちと、口コミを見て試してみることにした。新鮮だったし、割高だけどそのおいしさでリピートしている。(30代/個人事業主・フリーランス/女性)
都心部に住んでいても新鮮でおいしい野菜が購入できるのが、通販の大きな魅力のようですね。どちらの回答でも、野菜に対しての安全性を重視している人が多いようです。
新しいカタチの農業をめざして
農業の収入源は、農産物の販売によって得られます。就農すると農協(農業協同組合)に加入するのが一般的です。農協は各農家から農産物を買い取り、スーパーや直売所などの店舗に卸します。各農家は自分でレストランやスーパーなどに営業をかける必要がなく、経営に関して頭を悩ませる割合が少なくて済みます。反面、地域によっては栽培する農産物が限定されたり、有機栽培であっても買い取り価格が安いために元が取れなかったりするデメリットも生じます。必ずしも農協に加入しなければならないわけではないため、新規就農者の中には従来の方法にとらわれない方法で農産物を販売している人もいます。その販売方法のひとつが、インターネットによる通信販売です。農産物の品種や育て方に対するこだわり、生産者の姿勢などをwebサイトで示すことによって、消費者に対して農産物の安全性をアピールできます。日本全国どこにでも農産物を届けることができ、消費者のニーズをダイレクトに感じることができるのが大きなメリットです。その反面、経営や営業に関する知識を持ち合わせていないと失敗するリスクはあります。入念なリサーチのもと、どこで何を栽培するか、どのように販路を切り開いていくかを考えることが、非常に重要になってきます。
まとめ
「従来の方法にとらわれない農業」が、若者の就農を促すひとつの鍵となります。同時に、これまで日本の農業を支えてきた農家や地域とのつながりも大切な要素です。何事も自分1人だけで道を切り開いていくことは困難ですが、まわりの助けがあれば困難なことも実現可能な現実に変わります。農業就業人口の増加にはまだまだ課題が多い現状ですが、良い方向に少しずつ変化していることも事実。一つひとつの課題を解決していくことが、若者の就農者増加につながるでしょう。
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