農地や機械、種や肥料など、農業を始めるにはさまざまな物を購入しなければならず、十分な自己資金が必要です。しかし、就農を目指すすべての人に豊富な自己資金があるわけではありません。そこで国では、資金がない人のために補助金制度を設けています。今回は、就農を目指す人に向けて、補助金制度の応募条件やメリット・デメリットなどを解説していきます。
国の資金制度!農業次世代人材投資資金とは?
青年就農給付金として平成24年度から始まった国の補助金制度。平成29年度9月現在では農業次世代人材投資資金という名前に変わっています。補助金の趣旨はその名の通り、次世代の就農者を後押しするための補助金制度です。準備型と経営開始型の2種類に別れており、150万円の補助金を最大2年から5年間も受けられるのが最大の特徴です。収入が不安定、重労働、就農にあたり資金がかかるなどの理由で、日本の就農者数はすさまじい勢いで減少しています。高齢による離農者が増える反面、新規就農者の減少は止まらず、このままでは日本の農業は衰退してしまうという危機感から、減少に歯止めをかけるため青年就農給付金制度が生まれました。この制度により農業人口が劇的に増えたわけではありませんが、スローフードや健康志向の高まりと相まって、少しずつ就農を考える若者が増えているのも事実です。
農業次世代人材投資資金の応募条件
就農したいからと言って、誰もが補助金制度を利用できるわけではありません。農業次世代人材投資資金の準備型と経営開始型に共通する応募条件は、原則45歳未満で就農に意欲を燃やしている人です。準備型では、独立や自営、雇用による就農を目指しているかが重要で、経営開始型では実際に独立・自営就農していることが必須です。準備型を利用して就農することができれば、次に経営開始型を利用するという流れになります。準備型を利用するにはさらに農林水産省が運営する「一農ネット」に登録したうえで、自治体が認めた農業大学校や農家などで1年以上の研修を受け、就農にあたっての必須知識を勉強しなければなりません。経営開始型を利用する場合は、補助金の交付が終わったあとに、生計が成り立つことを前提とした将来設計を立てる必要があります。また、準備型も経営開始型も生活保護のようなほかの補助金を受給している場合は利用することができません。あくまでも就農者として自立できることを目的とした補助金ですので、将来の農業プランを具体的に立てることが補助金を受ける第一歩となるでしょう。
新規事業の資金調達!どうやって用意する?
どのジャンルにおいても新規事業を始めるには資金調達が必須です。そこで、どのような方法で資金を集めたいと思うのか、アンケートを実施しました。
- 【質問】
- 新規事業を始めるにあたり、資金がない場合にどのように調達しようと思いますか?
- 【回答結果】
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回答 回答数 働いて自己資金を作る 47 国や自治体の補助金制度を利用する 45 その他 5 親や親類に借りる 3 調査地域:全国
調査対象:年齢不問・男女
調査期間:2017年08月02日~2017年08月09日
有効回答数:100サンプル
借金はしたくない… 自力で資金を作る!
アンケートの結果、「働いて自己資金を作る」の回答が1位となりました。
- 親やその他を頼りにしたいのは山々なのですが、自分で事業を始めるのであれば自己責任として、自分のお金で始めたいのです。自己資金の方が気持ちの入れ具合も違うのではないかと思います。(30代/パート・アルバイト/女性)
事業を起こすなら自分の責任において自己資金を用意したいと考える人が多いようです。僅差で2位となった「国や自治体の補助金制度を利用する」のコメントはどうでしょうか?
- 自己資金は作るのに時間がかかるし、補助金制度を利用するのが皆にとって負担が少なく、メリットが多いと思うから。(20代/専業主婦(主夫)/女性)
国や自治体の補助金であれば、周りの人に迷惑がかからないと考える人が多い印象でした。では、少数派になった「親や親類に借りる」のコメントも見てみましょう。
親や親類に借りる
- 一番調達しやすいからです。(30代/無職/女性)
たしかに、親族を頼るのは難易度の低い方法と言えるでしょう。
1位と2位の結果を合わせると全体の9割が、自己資金調達において家族や親類に迷惑をかけたくないと考えているようですね。
資金がない人必見!補助金を受けるメリット
補助金を受ける大きなメリットは、自己資金が足りない場合でも就農を目指せることです。特に20代前半で就農を目指す場合は、親の援助を受けたり学生時代から地道に貯金をしたりなどの対策が必要です。資金がない状態から就農を目指すとなると、正社員であってもお金を貯めるのに時間がかかります。自己資金ゼロ、補助金のみで就農を目指すのはのちの出費を考えると危険ですが、少しでも自己資金を貯めることができれば補助金とあわせて農業を始めることができます。就農後、まだ経営が安定しない時期でも、当分の間は生活費に困らないというメリットもあります。研修から、就農後に経営が安定するまで、実に4年から7年ほどはかかります。農業は体力勝負ですから、そのあいだにきちんとご飯を食べて生活していくことが大切。国の補助金制度は農業の基盤ともなる生活の部分をしっかり支えてくれる存在と言えるでしょう。
気をつけて… 補助金を受けるデメリット
農業次世代人材投資資金のデメリットは、応募要項を守らなければ返還の義務が生じてしまうことです。たとえば、準備型の場合、研修を終えたあと1年以内に就農しなかったり、研修先で十分な技能を習得できなかったと判断されたりすると、補助金を返さなければなりません。経営開始型の場合は、補助金の交付期間と同じ期間以上、農業経営を継続しないと返還義務が生じます。また、補助金交付期間内はたとえ事業がうまくいっていなくても最低限の生活は保証されます。そのため、補助金を受けている就農者のなかには「生活できているからまだ大丈夫」と、辞めどきを誤るケースが出てきます。補助金の返還義務が発生したとしても、今後経営を立て直していける見込みがないのであれば、スパッと辞めることも大切です。ほかの仕事をしながら補助金を返還していくのか、売上の立たない経営を続けて補助金の返還額が多くなっていくリスクを背負っていくのか、よく考えるようにしましょう。
まとめ
就農を夢見る人にとっては、ぜひ活用したい国の補助金制度。しかし利用する際は、本当に農業がやりたいのか、就農後しばらくは収入がなくても耐えていけるのかなど、自分自身に問いかけることが重要です。農業は栽培技術のみならず、経営者としての手腕も問われます。本当に農業がやりたいのであれば、ぜひ補助金制度を利用して始めてみましょう。
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※参考URL
農林水産省、「農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)」
http://www.maff.go.jp/j/new_farmer/n_syunou/roudou.html